とくに都会ではマンションで暮らしているご家庭も多く、そもそも「勝手口」とは何なのか、何のために存在するのかピンと来ない人も少なくないでしょう。
ところで戸建ての場合、建売住宅では選択の余地がありませんが、自由設計の住宅なら勝手口を設置するかしないかの選択ができます。
逆にいえば自由設計の住宅を建てるなら勝手口の存在理由を知り、施工主として勝手口を設置するか、するならどんな勝手口にするのか判断しなければいけません。
この記事では、そもそも勝手口とは何かを説明し、自由設計で勝手口を設置する場合のメリットおよびデメリットについて解説します。
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この章では勝手口とはなにかについて、名前の由来、存在する理由、歴史そして最近の傾向などさまざまな視点から解説します。
勝手口とは1勝手口の名前の由来
勝手口の「勝手」は家事を意味し、その由来は江戸時代に幕府財政をつかさどるお役目を「勝手方」とよんだことにちなみ、庶民も家事を「勝手」と読んだことから始まりました。
弓道の世界では自由になるほうの手を「勝手」とよびますが、そこから自由に家事ができる場所つまり台所のことを勝手、台所への出入り口を勝手口とよぶようになりました。
茶道の世界では、客人を招き入れる茶室の出入り口「にじり口」に対し、主人が人目につかないように出入りする口を「勝手口」とよんでいました。
いずれもだだのうんちくではなく、自由設計で勝手口設置の検討にあたり、「家事を集中させる」「自由に家事ができる」「周りから目立たない」は大切な要素なのです。
勝手口とは2勝手口の存在理由
かつての戸建てでは、家族が団らんする場所と炊事・洗濯といった家事をおこなうお勝手(台所)は離れた場所にあり、水回りもお勝手に集中していました。
もし玄関しか出入り口がなければ、ごみを出すにも洗濯物をしまうにも居間を通らなければならず、必然的に台所には出入りするための勝手口が欠かせなかったのです。
勝手口とは2最近の傾向
ところが最近は、建売・自由設計問わずキッチンとリビングが一体化したオープンキッチンが主流になり、勝手口の存在意義は薄れてきました。
一方で自由設計の新しいトレンドとして、ごみ出し・洗濯などの家事をスムーズに行う上での効率性から、勝手口のメリットを改めて見直そうという動きも出てきています。
自由設計の家で勝手口をつけるメリット
この章では自由設計の家で勝手口をつけるメリットについて、ゴミ出し・買い物など生活上の利便性・防災面などの視点から解説します。
自由設計の家で勝手口をつけるメリット1ゴミ出しのスペース確保
分譲マンションだと24時間365日ゴミを出せるところも増えていますが、戸建は建売・自由設計ともに、屋内か屋外に一時的スペースを確保しなければなりません。
自由設計で勝手口を設計しないと、玄関からごみを出すことになり、屋外に一時保管スペースがなければ玄関付近にごみをさらしておくことになります。
とくに問題なのは生ごみで、キッチンで主に出るごみが生ごみであるため、勝手口がないために、持っていくのが面倒で生ごみを放置してしまうなんてことを防ぐことができます。
屋外にごみ保管庫を設ける場合も見栄えの面から玄関から離れた場所に配置することになるので、玄関と保管庫をいちいち往復しなければいけません。
自治体が細かくごみの分別を指定している地域では、燃えないゴミ・燃えるゴミ・ペットボトルなどと細かく分けて、指定日まで保管しなければいけません。
自由設計の家で勝手口付近にごみの一時保管スペースを確保しておけば、ゴミ出しの動線がグッと短縮されるうえに、玄関ともクロスしなくなります。
自由設計の家で勝手口をつけるメリット2防災対策
防災上の観点からは脱出口が多いほうが望ましいので、自由設計の家で勝手口を設置しておけば、地震や火災で玄関・ベランダがふさがれた事態を想定するといざという時に安心です。
自由設計の家で勝手口をつけるメリット3家庭菜園や駐車場との動線
自由設計の家において、勝手口と家庭菜園との相性は大変よく、獲れた野菜を運び込んだり、土や肥料を出し入れしたりするときにもリビング・玄関を通らずにすみます。
車で買い物をする場合にも勝手口を設置しておけば、米・油・しょうゆ・牛乳といった重量物を、駐車場からキッチンへ玄関を通らずダイレクトに運び込めます。
自由設計の家で勝手口をつけるメリット3換気や採光
オープンタイプのキッチンではキッチン付近に窓などの開口部が設けられていないため、採光がとれないうえに、換気扇があっても空気の入れ替えには限界があります。
自由設計の家で勝手口を設置すれば換気は改善し、魚を焼くとき出る煙に気にならなくなりますし、日の光が降り注ぐ明るいキッチンを実現できます。
自由設計の家で勝手口をつけるデメリット
この章では自由設計の家で勝手口を設置する場合のデメリットについて、防犯上の懸念・寒暖差・さらにはコストやスペースといった視点から解説します。
自由設計で勝手口をつけるデメリット1防犯上の問題
扉や窓などの開口部を極力減らすのは盗難などの防犯を考えるうえでの肝であり、勝手口をつければ泥棒の侵入経路をそれだけ増やすことになります。
施錠の面でも問題があり、道路に面する玄関は必ず鍵をするけれど勝手口の施錠を忘れるというご家庭はいまだに少なくないようです。
警察庁が公表している「侵入窃盗の発生状況」によると、泥棒の7割が玄関以外から、かつ半分以上が鍵のかかっていないところから侵入しているようです。
加えて、勝手口は一般的に道路から見えないような場所に設計されるケースが多く、人目を嫌う泥棒にとってはまさに好都合なのです。
最近は減りましたが、勝手口はうち鍵しかついていないタイプも多く、外鍵がついていてもピッキング対策が脆弱なケースが少なくありません。
自由設計の家で勝手口を設置するなら、補助錠やディンプルシリンダーなどをとりつけて、玄関なみのピッキング対策を講じましょう。
このほかにも自由設計にあたっては、勝手口への通路に門扉をとりつけて玉砂利を敷くなど、泥棒が嫌がる家づくりをめざしましょう。
自由設計で勝手口をつけるデメリット2冬場は寒く夏は暑い
たとえ自由設計で断熱壁などを使ったとしても、開口部が増えればそれだけ気密性・断熱性は低下し、空調を利用することで電気やガス料金もかかります。
お客さんを迎えるわけでない勝手口の扉は、玄関と違ってローコストタイプが選ばれることも少なくありませんが、こうした扉は断熱性も弱いのです。
自由設計の住宅なら、勝手口用に玄関なみの断熱性をそなえたドアを選ぶことも可能ですが、もちろん施工コストはよけいにかかります。
自由設計で勝手口をつけるデメリット3外構コストやスペース確保の必要性
勝手口は道路の側面に設置されるケースが大多数です、道路側から入れるように通路を設けなければならず、そのためのスペース確保も必要です。
外から見える通路も、土がむき出しで門扉もなしというわけにもいかず、見栄えを良くしようと思えば外構コストがプラスオンで乗っかってきます。
まとめ
自由設計の家における勝手口の設置には、ごみ管理のしやすさ・生活上の動線などいくつかのメリットが考える一方で、防犯面や断熱性の課題を払拭するにはコストもかかります。
自由設計の家で勝手口を設置するかしないかは、自分が日々の暮らしにおいてなにを大切にしたいのかを振り返りつつ、設計士ともよく相談のうえ判断しましょう。
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